料理力、それは「生きる力」だ!


 

私たちは食べなければ生きられない。食べることは、生きること。そして生きることは、食べることなのだ。ではあなたは、自分で食い物を調理し、自分で自分の食を支えることはできているか! 母ちゃんがいつ外出しても、いつなんどき病気になってしまっても、亭主が自分でお勝手を切り盛りできるようになれば、暮らしはより強いものになる。

そうだ! 男も、料理を学ぶ。それが活きる道なのだぁぁぁぁっ!

というような大逸れたテーマがあるわけではありませんが、いわき市地域包括ケア推進課が中心になり、男性向けの料理教室「さきがけ男の料理塾」が開催されているのを、皆さんはご存知ですか?

はい、知らないですよね。だからこうして記事に書いて皆さんに紹介しているわけですが、ただ書いてもつまらないので、いごく編集部、体験取材してきちゃいました!

 

大変にむさ苦しくて申し訳ありません・・・・。

 

植田町の植田公民館で開催された「さきがけ男の料理塾」を体験!

 

この料理教室、さきほども説明したように、男性の料理力(ひいては生活力)のアップを図るというのが狙いのひとつではあるのですが、シンプルに健康について啓蒙を図ったり、退職後に孤独になりがちな男性たちのコミュニティをつくること、なども目的として織り込まれています。

取り組みがスタートしたのは昨年度。これまで、勿来や常磐、内郷地区で複数回、開催されてきました。今回の料理教室も、植田町にある植田公民館が会場となりまして、事前に申し込んでいた男性、およそ10名で料理教室がスタートしました。

講師は北尾智恵先生。いわき市の人気フレンチレストランKitaoの北尾シェフの奥様でもいらっしゃいます。いやあ、すごい人を見つけてきたもんだよ。さらに、いわき「市」に所属している管理栄養士も脇を固める豪華布陣。とても贅沢な料理教室なんです。

料理なんてできない、包丁なんて握ったこともない、もちろん権力も家計も握ったことなんてないし、最近握ったものといえば自分のアレくれえだ、という方でも料理の基本を学ぶことができます。

 

講師の北尾先生。ソフトな語り口で、丁寧に教えて下さいます。

 

いわき市の管理栄養士がしっかりサポート。豪華布陣でお送りする料理教室。

 

 

料理を作る前に、まずはちょっとした「講義」。イラストや図を使って、自分たちが普段とっている食事が、いかに「塩まみれ」になっているかを確認します。

ちなみに、日本高血圧学会減塩委員会は、高血圧予防のために、1日6グラム未満という制限を勧めています。6グラムですよ。ラーメン食べたら終わりです。「ラーメンってこんなに塩分入ってんのげ」「あちゃあ、これじゃあ高血圧になっちまあ」といった具合でしょうか。ただの塩の話ですが、自分の健康を直結するものだけにリアクションは悲喜こもごも。

そして、その塩分をできるだけ控えめにしながら、自分たちで料理をつくれたらいいよね、健康にもいいし、母ちゃんに任せっきりにしなくていいし、しかも友達もできちゃう。参加料も安いし、いやあこの料理教室いいごどづぐめなんだあ。

 

塩分を知るために、まずは座学から。

 

具だくさんにすると、塩分は減り、野菜摂取量は増える。いいことづくめ。

 

さあ料理だ!

今回作るのは、ポークピカタ、セロリと人参の甘酢漬け、かぼちゃのはちみつ和え、野菜たっぷり豆苗の味噌汁の四品。けっこう本格的です。いごく編集部の猪狩と小松は無事に料理を作れるんでしょうか!

 

おいおい気をつけて、大事なカメラ燃えちゃうよ!!

 

必死の形相で何かに対峙する猪狩。

 

実際にはセロリを切っているだけ。「猫の手」だけはうまい。

 

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!

 

野菜、洗い終わりましたっ!!!

 

やっべ! ポークピカタのソースつくってねえじゃん!

 

塩分は控えめにね、と優しく先生からアドバイスされる猪狩。

 

なんとかオシャレにソースをかけようと悪戦苦闘。カッコだけはいっちょまえだなおめえ!

 

おれたちにもできましたぁぁぁぁ!!

 

四品の料理を作ることを通じて、食材を洗う、切る、下味をつける、おひたしにする、たまごや小麦粉につける、レンジでチンする、鍋で煮る、フライパンで焼くといったプロセスがまんべんなく入っているんです。複数の調理法が、いつの間にか習得できると言うわけ。大変よく設計されています。

しかも、父ちゃんたちでああだこうだ言いながら作るのがいいんですね。皆さん、それぞれに会社や事業を切り盛りしたり、ものづくりに励んだり、人を動かしてきた方達ですよ。それが、いろいろなことに悪戦苦闘したり、先生に教えを乞いながら料理と向き合う。これまでとは違う「立場」や「見え方」が、個々人にもたらされる、それがよいのだと思います。

 

さあああ、みんなでいただきましょーーー!

 

男たちがみんなで協力しながら、おしゃべりしながら作る。それがこの料理教室のいいところ。

 

回を重ねるうちに友情が芽生え出す料理教室。コミュニティづくりの取り組みでもあるのです。

 

—いわきの社会問題としての「塩分とりすぎ問題」

実はいわき市、心筋梗塞や脳卒中、2型糖尿病など生活習慣病の患者が増えています。まったく健康診断などを受けず、医師の介入のないまま状態が悪くなり、重症化してしまうというケースや、脳卒中になり、体にマヒが残って要介護になってしまったりすることも多いといいます。

特に気をつけなければいけないのが男性。65歳を超えて退職し、活動量が減っているのに、以前と同じように食べてしまったり、独り暮らしの男性の自炊が増え、味の濃い料理を食べ続けてしまったり、あるいは、退職してしまい所属するコミュニティがなくなり、外との関わりがなくなって、いきなり重症化して病院に運び込まれてくるようなパターンも多いのだとか。

生活習慣病からの疾患は、個人の医療費負担につながるだけでなく、いわき市の医療費増大につながり、そして「健康な人たちの保険料まで高くなってしまう」という負のスパイラルをもたらします。そのスパイラルから抜け出すには、今健康な人を、健康のままでいてもらうこと。要するに「予防」です。

そこで重要なのが、塩気の少ない料理を自分で作れるようになること。退職後もゆるやかに所属できるコミュニティを作ること、その二つです。ですから、それを念頭に置いて、この「さきがけ男の料理塾」が開催されている、というわけです。

確かに、筆者自身、カレイの煮付けはしょっぺーのが好きですし、ラーメンばっか食べてますし、夜は酒を飲まないと世知辛すぎていろいろとやってられません。だけれど、そんな日々の繰り返しが、体に悪さをし、気づかずに重症化させ、いつか脳や心臓に思い負担をかけてしまうことになるかもしれないと思うと、「塩」の使い方、できるだけセルフマネジメントしなくちゃいけないと思うようになりました。

 

塩の代わりに、ソースやマヨの塩気の力を借りるというのも有効だそうですよ。

 

漬物も、塩っぽいのじゃなく、酢漬けにすると健康効果アップ!

 

そういう「小さな意識変化」。「あっ、今日はこのへんにしとくか」とか、「昼はしょっぺーの食べちったから夜は野菜多めにすっぺ」とか、そういう気づきが、この料理教室で生まれる気がします。それが日々重なりながら、たまには自分で料理を作ってみると、「塩なんてこれっぽっちでもいいのか」とか、「あの食い物にこんなに塩入ってたのか」という発見につながり、それらが暮らしのなかに入っていく。

北尾先生のご指導のおかげでっ♡、いごく編集部もおいしく調理できました! また北尾先生の笑顔を見に料理教室に参加しますっ♡♡♡ そして、暮らしのなかに「小さな意識変化」を起こすべく、今後も自分で調理してみたいと思いますっ。

男たち、たまには自分で料理作ってみろ、母ちゃんに喜ばれっつぉ。でもな、いくら憎たらしいからっつって、母ちゃんのだけ塩たっぷり入れではダメだがんな!

 


公開日:2018年04月09日