みなさんこんにちは。いごく編集部、デザイン担当の高木です。もう9月だというのになかなか涼しくならない気候ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回は、先日遊びに行った「北二区集会場」のお話をお届けします。まるで子供の頃の夏休みのような、サマーシンフォニーな体験。北二区の魅力を目一杯味わってしまいました。
いわき市内に400か所近くある「つどいの場」。その中でも、好間の北二区集会場に集まるお母さんたちは、パワフルで元気いっぱい。そしてみんなが仲良し。2月にアリオスで開催された「いごくフェス」では『地域”食(SHOCK)”賞』を受賞しました。そんな皆さんとの夏の思い出話。はじまりはじまり。
ことの発端は、ある一枚の写真。いごく編集部チーフが見せてくれました。
「なんだ、これは!!!!!!」
僕は思わず、岡本太郎のように驚いてしまいました。語彙力が追いつかないスピードで迫り来る衝撃。それは、なんとも自由すぎるカカシたちが、寂しげな広場に並んでいるシュールな光景でした。
なんで田んぼでも畑でもないところに、こんなにたくさんのカカシがいるのだろう。
しかもこのコスチュームの自由さ。そしてこの完成度!
「いきいきサロン」というユルめなワードに、ビガビガした赤いグラフィックが組み合わさった看板。
……。
「なんだ、なんだ、これは!」
見れば見るほど謎が脳内でスパークし、その自由さ、その無邪気さに、常識やセオリーといった固定概念がガラガラと崩されていく……。そんな感覚。
なにこれなにこれ。チョー気になる。
チーフによると、北二区集会場に集まる、あの名物お母さんたちが手作りしたものだという。そしてこれらは去年の様子。このカカシ作りは、夏のカラオケ大会に合わせて毎年自主的に行っているそう。もちろん今年も作ります。ということだった。
そりゃ行くしかないでしょう。しかも「盆踊り」とかじゃなくて「カラオケ大会」ってなに?
というわけで、7月某日、カカシ作りを行っている北二区集会場にお邪魔してきました。
おひさしぶりでーす。開けっ放しの玄関から集会所に入ると、部屋の壁側にぐるりと並ぶ新作カカシたちの姿が! でたー!
その数なんと38体。そして部屋の中央の長机では、いつものお母さんたちが、あーだこーだと楽しそうにカカシを作っていました。
このカカシたちを、一体なんのために作っているのだろう。これってなんなんですか? お母さんたちは「村おこしだ」とおっしゃいました。
昔はこの地区の小学校には1300人もの生徒がいたと言います。そう、ここ北好間はかつて炭坑で栄えた町。炭坑列車も走り、町には劇場があり、映画の上映やお芝居などでとても賑わっていたそうです。
昭和30年台前半の炭坑閉山を境に、人口が減少し始め、数年前には、新しい建物などが建設できない「市街地調整区域」になってしまいました。
このままでは町の人たちは減る一方。かつて、子どもたちの遊び声が聞こえていた町の真ん中の広場には、人の姿はありません。そこで、元気なお母さんたちが立ち上がり、「カカシをたくさん並べてみっぺ!」ということになったそうです。素晴らしい! これぞ、ナチュラルボーン地域アート。
カカシのモデルには、地区で活躍した子ども野球チームや、地区のじゃんがら隊、地区のお祭りで使っていたハッピなどをまとった、まさにオリジナル北二区のカカシたち。ヒップホップ調でいうとレペゼン北二区なカカシたち。
面白いですね〜。素敵な取り組みだと思います。なんつって畳の上で談笑していると、何やら台所から美味しそうないい匂いがしてきたよ。
そこには、おにぎりをにぎにぎするお母さんの姿が。うわー! うまそう!
「あんたらが来るっていうからお昼用意しておいたよ」
うれしいじゃないですか。まるで夏休みにおばあちゃんの家に遊びに行ったような懐かしい感覚。テレビからは『生活笑百科』が流れている。網戸からは外の気持ちいい風が流れてくる。外は晴天。山の青々とした緑。完全に夏休みです。僕のサマージャム2018。
「さあ、できたよ! 机の上片付けて!」
うまそう! みんなに行き渡ったところで、いただきます!
このモツ煮込み、柔らかなモツにニンニクが効いたタレが絡みマジでうめえから! マジ半端ないうまさ! みなぎるパワー! うわー!
めっちゃうまかった。腹一杯。なんつってしばしゴロゴロしていると、カカシの中にはまだ顔が描かれていないヤツが何人かいた。そのことを口にすると、どうやらお母さんたちは裁縫は得意だが、どうも絵を描くのが苦手らしい。そこで、話の流れで僕がカカシの顔を描くことになってしまった。
僕は一瞬困った。なぜなら、地域のお母さんたちが作ったものに、よそもんの僕が手を加えていいのだろうか。絵が下手くそでもいいから絶対にお母さんたちで完結させるべきだ。それが味だ。なんて脳内ディレクションをした矢先に「昼飯食べさせたんだから、そのぶん働きな!(笑)」と。まるで、天空の城ラピュタに出てくる海賊ドーラおばさん。こんなセリフをかけられたら「はい!ママ!」と自然と従ってしまう。この巻き込まれ感はとても気持ちがいい。何だこの魔法は。
さあ! 腕をふるって描きましょう! 僕が書き込むたびに喜んでくれるお母さんたち。最高かよ。
来年は100体作りたいと意気込んでいました。もちろん僕もまた行きます。参加したい人! 今からゆる募しておきますので、我こそはという方、ご一報ください。
そして8月某日。カラオケ大会の日。飾られているカカシを見に、僕は再び北二区に行ってきました。
49号線を北上すると、出ました。このカカシが目印。この坂を下ると北二区です。
今年の新作カカシが勢ぞろい。1体、1体がすごく魅力的なので、記事の最後で紹介します。
同広場に設置されたカラオケステージ。何気なく見えるステージだけど、よく見ると既成のテントが入るように設計されいて、組んだ人たちの技術と経験が活きているとお見受けしました。手作りの看板も素敵です。揃っていない提灯とか。あり合わせだけど、盛り上げようという気持ちと、愛情がすごくこもっていて可愛いステージ。
さて、カカシも見たし帰ろうかなと思っていたら、「今日は腹踊りすっから!」と、お母さんたち。
なに? またしても気になってしまう。見ないわけにはいかない。カラオケ大会が始まるのは夜。まだ時間が結構あったのですが、もう図々しくも広場の向かいのお母さんの家にお邪魔して待つことに。するとまたここでもサマージャム2018が。帰省してるお孫さんが遊びに来たり、近所の人がカラオケ大会で出すトウモロコシを持って来たり、実行部隊のみんなが食べるためのカレーに使う炊飯器が近所から届いたりと、家にはたくさんの人が出入りして賑やかだ。なんか昔、僕のおばあさんの家でもこんなことがあったなあ。いとこや親兄弟が賑やかに集まって花火をしたりして遊んだ記憶。テーブルには料理がたくさんあって、おばあさんがどんどん作ってた。なんて懐かしく、居心地のいい雰囲気なんだ。初めてお邪魔した家なのに懐かしいなんて不思議。そうこうしてるうちに、カレーを振舞っていただき、みんなで食べた。これもまたうめえんだ。
カレーを食べながら、なぜカラオケ大会なのか質問してみました。お母さんたち曰く、昔は盆踊りをやっていたのだけど、年々参加者が集まらなくなったので、14〜15年前からカラオケ大会にしたのだそう。みんなが集まるようにと、お楽しみ抽選会を企画し、抽選券は回覧板で地区の全戸に配布しているという。もちろんその抽選券も手作り。自分たちの地域を自分たちの力で、できることを工夫して、地域のみんなと面白おかしく実行しているのが北二区のみなさんなんです。だからみんなが仲がいい。一人暮らしが多い地区のようですが、地区が大きな一つの家のように機能していて、みんなが家族のようにその土地に暮らす。このスタイルこそが地域包括なのかもなと思いました。自分の暮らしの地区の中で『いごく』。いいなあ。いいところだ。なんつってまったりしていると、「さあ!もうそろそろ腹踊りの出動だよ! 会場に向かいな!」。
あたりはすっかり暗くなり、カラオケ会場は自慢の歌声を披露する人、パイプ椅子に座って歌を聴く人、屋台で買ったものをつまみにビールを飲む人など、結構たくさんの人で賑わっていました。提灯の明かりがとても優しい。
歌声に思わず聞き惚れてしまったり、なんだこの不思議な選曲はw、と楽しんでいたら、突然奇妙な乱入者が! そう、我らが腹踊りシスターズの登場だ!
会場を駆け回る腹踊りシスターズ。ドラクエの「おばけキノコ」のようなフォルムで、まさに「不思議なおどりをおどった!」である。MPは吸い取られなかったけど、僕たちはまさに「はらをかかえてわらっている!」状態に。
最高すぎでしょ。こんなお母さんたちとまた遊ぼう。僕は来年、ここに並んだ100体のカカシ見てみたいです。来年のサマーシンフォニーは北二区でカカシ作り! もっともイケてる夏の過ごし方! 一緒にドープなカカシをメイクしよう! 待ってます! あ、今年のカカシたちは9/15くらいまで飾ってあるそうなので、気になった方は是非足をお運びください。
おしまい
カカシギャラリー *題名は僕の妄想です。
文・写真/高木市之助
公開日:2018年08月31日