支え合い活動の現場から

地域のこと、できるだけ地域の人たちで


 

レポート:辺見 珠美(いごく編集部インターン)

 

川内村に4年間住んでいた縁で、時折、独居高齢者の家に様子を見に行くことがあります。

と言っても、元気にしているかな、生活は荒れてないかな、そんなおせっかいを焼きながら、お茶でも飲んで帰るだけ。今は幸いにも皆さん元気です。けれど、そのうち一人で生活が成り立たなくなるときが来るかもしれない。そんなとき、きっと、近所の支え合いが必要になるはず。

いまだに人付き合いの濃い川内村のようなところでは、まだ支え合うことができるかもしれません。けれど、そんな結びつきがない団地などの住宅地では、近所付き合いはますます減少し、支え合いを意識的に行わないといけなくなってきています。

住民同士が支え合える社会を作っていこうと、いわき市では、独居高齢者や高齢者のみの世帯を地域の住民同士で支え、生活の質の向上を図ろうというという取り組みが行われています。それが「住民支え合い活動づくり事業」。住民同士での支え合い活動が増えるように、各地区の社会福祉協議会に生活支援コーディネーターを配置し、地域の各団体に対して、活動に対する助成や情報提供を行おうというものです。

先日、ちょうどその活動が行われるということで、取り組みの一端を取材させてもらいました。

 

 

朝8時15分。四倉町梅ヶ丘団地個人宅集合。朝がめっぽう弱い私ですが、早起きして四倉町に向いました。どうしてこんなに早いのか分からなかったのですが、着いて合点。8時15分、それはゴミ出しの時間だったのです。

四倉にある梅ヶ丘南団地には、支え合い活動を担う「21区ニコニコ会」という会があります。高齢になって足腰が悪くなるなど、朝のゴミ出しが出きなくなってしまった世帯のゴミ出しを、地域の住民サポーターが代わりに行っています。

 

サポーターが地域の困りごとをお手伝い。この日はゴミ当番!

 

住民サポーターの一人が、いつものごとく玄関先にある対象世帯のゴミを回収していきます。「ゴミ出し手伝ってくいよ」なんて、ちょっと言い出しにくいけど、生活するうえで欠かせない行為が住民同士の支え合いでできている。ひとつの世帯の生活が、みんなの手で作られていました。

会長さんに話を聞いてみると、活動を通じて起きた変化として、これまで以上にお互いを思いやるようになったそうです。また別のあるメンバーは、感謝の絵手紙をもらったと喜んでいました。サロン活動への活気も出できたとのことで、住民支え合い活動が始まる前と後では、3倍近い参加者の変化があったのだそうです。

その話しぶりから、会長さんが良い変化を実感しているのだなと感じることができ、この「お互いさま」の関係がとても心地よく感じられました。この団地の新しいニュースとして、空き家だった家に新たに2件入居が決まったとのこと。地域の支え合い活動を受け継ぐ担い手になってくれたらと願うばかりです。

 

にこにこ会の佐々木寛会長。ピースをキメていただきました!

 

 

次に訪れたのは、内郷高坂町。

すすきに埋もれた民家の庭が、ギュィィィィンという草刈り機の轟音によって露わになってきます。こちらは庭木の手入れが難しくなってしまった高齢独居世帯のお宅だそうです。二人のサポーターがお互い声を掛け合いながら、たまにペットボトルのお茶を飲みながら草を刈る姿。頼もしさがみなぎっていました。

 

高坂9区つどいの会のお二人。息のあったチームプレイで雑草を一掃!

 

そんなサポーターを、近所のご婦人の方々が見守っていました。毎日デイサービスで庭木の手入れなんてできる状態じゃなかったから、本当に頼もしいしありがたいと。高坂9区の小堀区長は「いつまでできるかわからないけど、やれるうちはやっていかないと」と一言。支え合い活動は、ハードなものもあるのでしょう。けれど、それだけ地域の中で存在意義は大きくなっていることを感じました。

 

午後、次に訪れたのは、泉駅にほど近い、泉の玉露地区です。

 

サポーターのメンバーが、一人暮らしのお母さんの家を訪問

 

泉玉露でも初期に整備された住宅街だそうです。私の出身も同じような古い住宅街で、街のブロック塀など地元に戻ったかのような錯覚を抱き、とても親近感が湧きました。

ここでは、見守りの域を超えて、積極的に家庭の話を聴く傾聴活動に取り組んでいます。会長さんと対象者の独居世帯へ訪問したときは、お母さんが帰って来るまで少し待とうということになり、どうしてそこまでするのか不思議に思いましたが、それにはわけがありました。

 

玉露1区の江崎区長とともに傾聴に同伴しました

 

以前、この地区では防犯パトロールと称していかにも防犯パトロールらしいビブスを来て地域を回っていたのですが、逆に住民から警戒されてしまい、仲良くなれなかったといいます。その後、さらなる充実を図るために見守り活動も始めましたが、それでもなお、高齢独居世帯など、深い悩みを抱えているような世帯とは親しくなれなかった。

高齢者が孤立してしまうと、健康上だけでなく、防犯上のリスクも生まれかねません。そこで、パトロールや見守りだけではいけない、もっと家庭に入って親しく相談できるような関係づくりをしなくてはいけないと思い至り、こうした傾聴活動が行われるようになったそうです。

今回訪れたお母さんは、区長さんたちが足繁く通い、色々なお手伝い、支え合いをしたことで信頼が強まり、今では地区のお祭りなどに力を貸してくれるようになったと区長さんは言います。このつながり、果たして私の地元にもあるのだろうか? もう一つのふるさとでもある川内村にはあるのだろうか? と考えずにいられなくなりました。

 

サポーター3人で、お母さんを訪問し、世間話などをしながら困りごとなどを聞いていきます

 

私は今回活動を見学するまで、住民同士でここまで生活に入り込んだ具体的な支え合いの活動が行われていることを知りませんでした。これを機に、自分の祖父母には近所に相談できる人がいるか、ゴミ出しできているか、庭木は大丈夫か、連絡してみようと思いました。

今回3カ所の活動を見学して思ったのは、なぜここまでできるのかということです。泉玉露のように危機感からかもしれない。でもそれだけで継続できるだろうか? 3カ所とも共通して印象に残っていたのは笑顔でした。サポートする側とされる側、両方に自然と生まれる笑顔。私たちの暮らしは笑顔と感謝の気持ちで支え、支えられているのかもしれません。

 


公開日:2019年03月01日