様々な手を結ぶ、新聞バック

あろうとコラム vol.4


 

いごく的福祉=あろうと。様々な生きにくさがあろうと、困難や喪失があろうと、その人らしく生きるには。あろうとコラム第4回は、いつだれkitchenでテイクアウト用に提供されている、新聞バックの作り手のお話です。

 

あろうとコラム vol.4 様々な手を結ぶ、新聞バック

 

平上荒川の食のたまり場、いつだれkitchen。新型コロナの影響で2020年3月から営業を自粛していましたが、6月にテイクアウトも併用して営業を再開しています。テイクアウト用の持ち帰り袋に使われているのは新聞バック。あなたは見た事がありますか?

2050年に海洋プラスチックゴミが魚の量を超えてしまう、そんな衝撃的な予測が出て、世界的にプラスチック使用量の削減の動きが進んでいます。日本でも7月からビニール袋の原則有料化が始まり、皆さんの中にもなんとなくプラスチックを減らそう、そんな気持ちが生まれているのかも知れません。

最近各地で盛んになっている新聞バック作りの動きも、まさにそうなのでしょう。コロナ禍でテイクアウトすることも多くなり、むしろプラスチックを使うことも増えてきた実感もあります。いつだれkitchemでも営業再開して以来、ビニール袋の代わりに手作り新聞バックを使っています。

実はその新聞バック、ある福祉施設でたくさんの皆さんの手から作られているのです。今日は、そんないつだれ新聞バックの作り手のおはなし。

 

−名人たちの集う場所へ

作り手の皆さんがいるのは、NPO法人布紗が運営する「地域活動支援センターてらす」。一般的に、障害を持つ方の日中の活動をサポートする施設である地域活動支援センターですが、「てらす」では他の事業所に通っている方がここではまったりと休日を過ごせるような空間を意識しているそう。土日がとても賑わうよとお話を聞き、それならば、と日曜のお昼間に伺うことにしました。

 

いわき駅裏、旧城跡にある地域活動支援センターてらす

いわき駅裏、旧城跡にある地域活動支援センターてらす

 

てらすの扉を開けると、てらす代表でスタッフの太田さんが明るい声で出迎えてくれました。中を見ると少しびっくりしたのが席の配置。なんか学校みたいな…。太田さんによると、これはコロナ対策なんです、とのこと。いつもは一つのテーブルに集まってワイワイ過ごしているそうなのですが、こんなご時世、やむを得ません。

 

思い思いに楽しむ利用者さん。この方は手芸に没頭

思い思いに楽しむ利用者さん。この方は手芸に没頭

 

そんな中に、新聞バック作りをしている方が!

 

利用者さんの手元を見ると、どうやらそれぞれ、思い思いに楽しんでいる様子。手芸、ビーズアクセサリー、カラオケ…そんな中に、いたいた! 新聞バックを作っている人が。どうやら、一つひとつの工程を手分けしてやっているみたいですね。

面白いのが、ここでは各工程が「◯◯名人」と呼ばれていること。「折り名人」から「ひも名人」、「はんこ名人」に「切り名人」。いくつもの名人が作ったパーツを最後に「貼り名人」がつなぎ合わせて、新聞バックがみるみるうちに完成していきます。

太田さんに倣って、馴れ馴れしく「名人!」と呼んでみると少し照れた顔をして返事をしてくました。名前の付け方が、なるほどなあと。確かに名人と言われたら私だってテンションあがっちゃいますもんね。しかし、名人とは名ばかりではありません。

この名人の皆さん、手つきを見ていると確かに、と唸らされます。まず作業がとても正確、それでいてめちゃくちゃ早い。みるみるうちにパーツができていきます。まさにプロ集団というべきか、仕事ぶりはまさに「名人」。

 

シュッと勢いよく、しかし丁寧な折り名人

シュッと勢いよく、しかし丁寧な折り名人

 

驚くべき速さでバックの取っ手を作っていく、ひも名人

驚くべき速さでバックの取っ手を作っていく、ひも名人

 

丁寧に塗りたくって…

 

ヨイショ!

ヨイショ!

 

ヨッ! ハンコ名人!

 

自由に和紙を引きちぎる、切り名人もいれば

 

小刻みよく張りつけていく、貼り名人まで!

 

ひとつ手だけに注目してみても、折り方をはじめとして丁寧さが伝わってきます。写真の中にあるいつだれハンコは、ロゴをデザインしてくださった高木さんが手彫りで作ってくれた特製ハンコ。
(作成の様子は▶︎Youtube:高木市之助のデザインチャンネル)。

ハンコの陰影も、和紙をビリビリと自由に破った感じも一つひとつ違って面白いですよね。そして、作った材料が集まり、完成! てらすに来るまで、いつだれ新聞バックにこんな様々な人が関わり、作っているとは思いもしませんでした。

 

数々の名人の手を経て、いつだれ新聞バック完成!

 

一番印象的だったのが、みんな楽しそうに作っていたこと。顔は写さないで、との条件だったのでその表情を見せることができないのが非常に残念なのですが、手芸だったり、カラオケだったり、そんな思い思いに過ごす時間の中に、新聞バックづくりがある感じなんです。

でもその気楽さというか、ユルさの中で楽しんで作ってもらえる方が新聞バックを使わせてもらう私たちとしてもなんとなく気分がいいですよね。

 

大人気なカラオケ。順番になると急いでマイクを握り、熱唱

 

好きなものを常にそばに。割れるほどに愛おしい

 

大好きなウサギちゃんを手元に置いている人も

 

利用者さん手書きの「あいています」のユルさも素敵!

 

ゆっくりゆったりすごせるみんなのいばしょ、まさにそんな場所でした!

 

さて、木曜日。いつだれkitchenの営業日です。

取材の後は、これまで以上にさらにたくさんの顔が浮かぶようになりました。てらすの人たちが作った手作り新聞バックに、様々な人たちからいただいた食材を使った母ちゃん特製の料理が入り、お客さんの手に渡る。その場にいなくとも、たくさんの人たちの顔が浮かんできます。

それってなんかいつだれらしいなあと感じるんですよね。いつだれらしさとか雰囲気は、誰か一人が作っているものではなくて、数々の手を介することで生まれているのかもしれません。

 

てらすの人たちが作ってくれた新聞バックは、持ち帰り容器がぴったり入る絶妙な大きさ

 

逆さまだって、なんだか味に感じちゃいます

 

おんちゃんの手にも渡りました

 

様々な手「が」結ぶ、様々な手「を」結ぶ、いつだれ新聞バック、いつだれkitchenのテイクアウトでご利用になれます。もしご覧になりたい方は気軽にスタッフにお声がけください! てらすの皆さん、これからもよろしくお願いします。

 

文・森 亮太(いつだれkitchenスタッフ)

 

information

地域活動支援センターてらす
所在地:福島県いわき市平字旧城跡12番地80
電 話:0246-22-5491
種 類:地域活動支援センター
運 営:特定非営利活動法人 布紗

 

 

 

 


公開日:2020年09月04日