病院と薬局の連携でがん患者を支えます!

福島労災病院が提案する『薬-薬連携』


 

「私たちのチャレンジを聞いてほしい」
我々編集部に一本のメールが届きました。
三度の飯の次にチャレンジが好きな我々は、早速話を聞きに行きました。
伺った先は、独立行政法人  労働者健康安全機構 福島労災病院。
いわきに暮らす方なら「労災病院」の呼び名でお馴染みですね。
名刺交換とご挨拶もそこそこに、早速、チャレンジについてお聞きしました。

 

-がんの現状

 

 私たちは、労災病院の薬剤部という部署に所属する薬剤師です。入院されている患者さんの日々のお薬の調剤や服薬管理を担っています。当病院は入院ベットの数は399。約400人の入院患者さんの毎日のお薬を担当しています。

 

ーー 朝・昼・晩と一日に3回お薬を服用するとしたら、単純計算で毎日、約1,200回分のお薬を調剤し、服薬管理しているんですね。それを毎日、、、すごい。

 

 突然ですが、イガリさん。この国では、がんって、何人に一人がかかる病気かご存知ですか?

 

ーー いきなりだなw、、生命保険のCMで言ってたような気がする、、、う~ん、、、3人に一人ぐらいでしょうか。

 

 半分正解です。
がんは、男性は2人に一人、女性は3人に一人がかかると言われています。ですが、ガンで亡くなる人は、男性で4人に一人、女性で6人に一人の割合です。

 

ーー ということは、がんになっても、必ずしも皆さん、ガンで亡くなってるわけではないということですね。

 

 そうなんです。
いまやがんは誰にでもかかりうる病気であると同時に、ガンとともに生きていくという時代でもあるのです。

だから、がんの治療を受けながら、仕事をしたり、日々の生活をおくるというケースが多くなっていきます。

 

ーー ご自宅で暮らしながら、がんの治療を受ける。入院ではなく、病院に通院しながら受ける治療って、どんな治療なんですか?

 

 抗がん剤などによる治療になります。
患者さんの状況によって異なりますが、例えば2ー3週間に一回、病院に来て抗がん剤の点滴などによる治療をするという感じです。

 

 

今回オファーを出してくださった福島労災病院薬剤部の高木薬剤師さん

 

 

「通院しながらの治療」を支える仕組み

 

 ただ問題がないわけでもないんです。
それが、「副作用」の問題です。

 

ーー 聞いたことはあります。副作用って、具体的にはどんなものがあるんですか?

 

 一般的には、吐き気や嘔吐、食欲不振、下痢や便秘、味覚障害、手足のしびれ、口内炎などさまざまです。

入院されている患者さんの場合は、当然、病院の中なので、常に医師や看護師、そして私たち薬剤師が、副作用の症状を見ながら、適切な対応をすることができます。

ですが、通院での治療の場合、治療を終え、ご自宅に戻ってから出てくる副作用を誰がどのように対応するかという問題が出てきます。

 

ーー たしかに。住み慣れたご自宅で暮らしながら治療を受ける。すごくいいなと思って聞いていましたが、こと副作用に関しては問題ですね。

 

 そこで、この問題を少しでも和らげることができるような薬剤師の取り組みが、今回お伝えしたかった私たちのチャレンジです。

 

ーー おぉぉぉ、めちゃくちゃいい流れですねw

 

 

 

 私たち病院の薬剤師と、地域にある調剤薬局の薬剤師さんが連携して、外来(通院)の患者さんをサポートしていこうという取り組みです。

私たち病院の薬剤師は、患者さんが病院から一歩外に出てしまうと、なかなか体の体調や副作用の有無を把握することができません。

次にその患者さんと会えるのは、先ほどの例でいけば2ー3週間後ということになります。その間を、地域にある調剤薬局の薬剤師さんにフォローしてもらうという仕組みです。

 

ーー ふむふむ。

 

 こんなステキなケースがありました。
抗がん剤の副作用で吐き気に苦しんでいた患者さん。でも、抗がん剤を飲むのをやめてしまうと、これまで飲んできた抗がん剤の効果が下がり、効果を発揮するこができなくなります。

そこで、そのことを聞いた調剤薬局の薬剤師さんが病院の薬剤師へ、患者さんの状況を報告してくださり、その内容を医師へ伝え、医師から吐き気止めの薬が処方されました。

副作用の吐き気を抑えることで、次に病院に来るまでの間、その患者さんは、抗がん剤の服用を続けることができ、治療効果をキープすることがでできたんです。

 

ーー めちゃくちゃいい話、めちゃくちゃいい連携じゃないですか!

 

 そうなんです。
それに、病院の外来って混んでるというか、常に患者さんが待っている感じがしますよね。それもあってか、なかなか患者さんのほうから医師にゆっくり話すことが難しいというか、遠慮してしまう方もいらっしゃいます。

その点、身近な調剤薬局であれば、病院の診察室よりも話したり、相談しやすいと思うんですよ。

 

ーー そうですね。私も待合スペースに他の患者さんがいると思うと、自分があんまり時間をとっちゃ悪いかなと思います。

 

 がん患者さんだけでなく、今後ますます高齢化を迎えていく中にあって、自宅で過ごしながら、医療や介護のケアを受けるということがもっと増えていくと思います。

そこで、病院やクリニックという医療機関だけでなく、身近な調剤薬局の薬剤師の力というのも、どんどん必要になってくると思います。

 

中村薬剤部長と薬剤師の住谷さん

 

ーー 本当にそうですね。病院とクリニックの連携もですし、医療と介護の連携もしかり。そこに更に、病院の薬剤師と地域の調剤薬局の薬剤師の連携も加わっていく。まさに、「みんなで支えていく」ですね。

 

 はい、垣根を超えて大きなチームを組んでいく。チームで支えていくイメージです。

 

ーー サイコーじゃないですか。こんなステキな取り組み、チャレンジでもなんでもなく、単純に推し進めていけばいいだけじゃないですか?

 

 私たちもそう思っているんですが、、、
イガリさんも、今日初めてこの取り組みを知ったと思いますが、まだまだ全然知られていないんですよ。

 

ーー 患者の皆さんにですか?

 

 患者さんだけでなく、薬剤師の中でも、もっともっと認知を上げていかなきゃと思っているんです。

 

ーー 患者さんにも当然この取り組みを知ってもらう必要がありますし、この取り組み/サービス/連携を提供する薬剤師の方々にも知ってもらい、この連携の輪に参加してもらう必要があるというわけですね。

 

 そうなんです。患者さんと薬剤師。双方に知ってもらい、この取り組みを展開していきたいんです。

 

ーー 今日、お話を聞いて、この取り組みと連携のネットワークがいわきで広がっていけば、がんになっても、ご自宅で暮らしながら治療を受けれる。もし副作用があっても、病院と身近な調剤薬局が連携して対応してくれるという安心につながりますね。

今回のインタビュー記事だけの発信ではもったいないですよ。ちょっとシリーズ化して、次は、この取り組みを活用した患者さんや調剤薬局の方のお話も聞かせてください。
まずは、今回、ステキなお話、ありがとうございましたー。

(文/写真 猪狩僚)

 

 


公開日:2023年04月19日