笠間さんの言葉からは、「連携不足」という、医療や介護の抱える大きな問題が見えてくる。お互いの領域を意識してしまうあまり連携が途切れてしまうのだ。笠間さんは、こう話を続けた。
「例えば、役所の人は『相談に来てください』とは言ってくれるけれど、本当に困っている人は相談に行くこともできないんです。だから『こっちからお話を伺いますよ』って相談を取りに行く。そして適切なところにつなげる。行政、医療、介護、親、本人、この連携が取れたら、現場の負担を大きくせずに、救われる人たちを増やすことにつながるんじゃないでしょうか」。
当たり前のことだけれど、福祉や医療に関わる人たちがいなければ、私たちの健康的な暮らしを維持していくことは難しい。福祉や医療に関わる人たちが最大限にその能力を発揮できるような環境を作ることは、つまるところ私たちの幸せな暮らしに資するということだ。介護や医療に関わる人たちの社会的地位や待遇の改善を図りながら、働く人たちの連携を増やし、関わりしろを大きくさせていくことで、問題点も炙り出され、結果的に地域の医療福祉が充実化する。「連携」は、その第一歩だ。
そしてその「連携」は、福祉や医療に関わる人たちだけでなく、地域や社会にもゆるやかに接合されたほうがいい。「なんか、猛烈に関心を持って小難しいことをやってても変わらないっていうか、いろいろな人たちが楽しい時間を通じて、結果的にお互いの抱える課題とかが共有されるほうがいいし、新しい気づきとか、価値が生まれるはずで、そっちにこそ目を向けられたらって思うんです」と、笠間さんはいう。
「新しくできる『どりーむず』も、ご近所の方とかにも来てもらいたいし、野菜いっぱいできちゃったんだーって農家の人が来てくれたり、そういう場所にしたいんです。重心の子どもの家庭って、やっぱり負担が大きいので、お子さんがその子一人だけってことが多いんです。だから、子どもたちがわしゃーって遊びに来てくれて、『その車いすなに?』とか『それ何に使うベルト?』なんて聞いてみたりして、普通に交流できる、そういう場所。なにも崇高な理念なんてなくて、ただ、普通に楽しく生きる。それだけなんですよ」