昨日、おなじみの好間北二区でクリスマス会があるというのでお邪魔してきた。風もなくうららかで、みんながちょっと外に出てみたくなる、そんな小春日和。
早めに行ってみると総料理長「かたぎしよしえ」さんの指示で手際よく作業が進められていた。2口コンロがあるだけの集会所の台所で、これだけ大人数の料理を提供する。しかもそのクオリティがハンパない。
今日のメニューについてご説明いただきたいところだったが、10時の開始時間を前に、総合ディレクターでもある「かたぎしよしえ」さんは少々気を揉んでいた。踊り子(igokuメンバー)の会場入りが遅れているのである。
「猪狩さん来んだよね?あだし連絡したんだがら?」猪狩編集長は今日、自宅の冷蔵庫の搬入があって遅れている。「冷蔵庫なんか午後搬入したらいいべねまったぐ。いっちゃんは?いっちゃんは来んだよね?あだし電話したよ?」いっちゃんこと高木市之助のスケジュール帳には10時30分開始とメモされていた。今小名浜の家を出るところだった。「瀬谷さんは?まだ来ねえの?なんだい10分つったら20分け?」瀬谷伸也はおそらく、早く来ると踊らされることを察知していた。
その間も「かたぎしよしえ」さんはシェフたちの盛り付けに抜かりなく眼を光らせ、踊り子の衣装を倉庫から引っ張り出し、CDラジカセで音源チェックをしたかと思うと、今日来られなくなったお年寄りの家に一軒一軒自らデリバリーに行くのである。これだけ広く眼が行き届き、すばやく的確な指示を出し、しかも自分でも動き続ける人を私は見たことがない。「最強コミュニティ・デザイナー」の名をほしいままにする所以である。
会場ではビンゴゲームが始まった。今日はクリスマス会なのだ。プレゼントもたくさん用意されている。進行役のキミちゃんがひとつひとつボールを取り、数字を読み上げて行く。しかしなかなかビンゴになる人がいない。ただただ時間だけが経過していく。
みなさんの後ろにまわって様子を見てみるとなんとなく理由が分かった。「72番」と読み上げられてもなかなかそれに気づかないのである。そのまま次の番号が読み上げられてしまう。全員が3列くらい揃っていてもよそうな時間帯だが未だリーチもかかっていない。なるほどビンゴへの道は遠いのである。
やがて踊り子(igokuメンバー)が続々と到着しはじめた。総合ディレクター「かたぎしよしえ」さんが超高速で浴衣を割り振り、帯や小物のコーディネイトを決めていく。「この浴衣いいべね?道後温泉に行ったどぎもらったの」などという話を聞きながら「果たしてもらえるものなのだろうか」と思っているうちに写真を撮るはずの私もお構いなしで着つけられてしまった。「ズボン脱いだほうがいいげども、ま!いいが!CDかげな早ぐ!早ぐ!」えええ!まだ準備が、、
ドン、ドドン、ドン、ドン・・・
二代目鈴木正夫『いわきやっちき』が高らかに鳴りはじめた。「キミちゃん早ぐ出で!」総合ディレクターのキューが飛ぶ。キミちゃんに続いて我々も出てはみたものの、igokuメンバーはちゃんとヤッチキを踊ったことがなかったりするのでカオス状になってしまった。
なんとかギリギリ踊っているが、しかし踊りの輪がだんだん小さくなって、しまいには円運動も止まり、その場で飛び跳ねているだけになってしまった。一体我々はなにをやっているのか。
なぜかアンコールもかかったがあっさり終了し、グッドデザイン賞のご報告と記念撮影。そしていつものごとく私たちもご馳走になってしまうのである。
さて、ここで総料理長「かたぎしよしえ」さんに今日の素晴らしい料理のいくつかを紹介していただこう。
「ら・ら・ミュウの魚屋で値段交渉が大変だったシュウリ貝の酒蒸し」
「あだしが全部ひろって皮むいで指かゆぐなった銀杏焼き」
「ら・ら・ミュウの2階に食堂出してる魚屋あっぺ。あそごで奥がら出させだボダン海老のさっと煮」
「あだしの畑の聖護院大根の漬物とこれはキミちゃんとごの柚子」
素晴らしい。そしてことごとくうまい。料理にはうるさい鍛治哲のテンションが異常に上がっている。なにがすごいってこの手間暇である。手間暇は愛だ。誰に頼まれた訳でもない。クリスマス会だからと大奮発した御膳に、コミュニティのみなさんの笑顔がはじけている。これが北二区の「つどい」だ。
最強コミュニティ・デザイナー「かたぎしよしえ」さんのアクティビティはまだまだigoku編集部を魅了し続けている。その化学反応がそこでもここでも起こっている。今日のようにigokuメンバー6人で参加し、それぞれが周囲に目を配っていたとしてもその全貌は掴みきれない。
ひと段落したあとでメンバーが集まり、今日はこんな場面があったよ、こんな会話があったよと報告し合っていると、映像カメラを回し続けていた田村博之がつぶやいた。「ドラマしかないっすね、、」
そう、ここには、ドラマしかない。
(おわり)
公開日:2019年12月13日
好間町北二区集会所
いごくではおなじみ。旧炭鉱町の人づき合いがなせる業か、一山一家を地で行くような「つどいの場」がもたれている。