先日、勿来公民館で開催された「子どものための料理教室」にお邪魔してきました。この料理教室では、地域で継続的に見守っていきたい子どもたちと勿来地区ボランティア連絡会のみなさんが、毎月第3金曜日に食事作りを行います。調理の実践と自立のサポートを理念に掲げ、3年前から活動がスタートしました。
この日のメニューは、カレー、パンプキンサラダ、春巻きなどの計4品。メニューのラインナップは、カレーのように毎回作るものもあれば、旬の野菜を取り入れた季節のものなどさまざま。カレーは、辛口と甘口の2種類が作られていて、ここでは、子どもも大人もみんなが美味しいと感じられ、かつ楽しいと思える「食事作り」が大切にされています。
材料が揃い準備を終えると、それぞれの持ち場に分かれて調理がスタート。調理はもちろん、子どもたちも一緒です。大人のそばで包丁の使い方や炒め方を教わりながら、実践していく子どもたち。率先してかぼちゃを切ろうとする子や一つずつ丁寧に春巻きの皮を包む子など、一人ひとりのペースにボランティアのみなさんが寄り添い、調理が進んでいきました。
現在は、新型コロナウイルスの感染リスクを考慮し、作った料理はその場で一緒に食べずに家庭に持ち帰っています。完成した料理を持ち帰り用のパックに分けていると、そこにはメニューにはなかったはずの唐揚げが! 驚いたのも束の間、ボランティアの方が「この料理教室の理念に賛同している地元の飲食店が、無償で提供してくれているんです」と教えてくれました。料理の他に、お菓子や飲み物が入った袋を両手に抱える子どもたちをみんなで見送り、料理教室は終了しました。
それぞれのカタチ
さらにお話を聞いていく中で、感染がピークを迎え公民館が使えなくなった時でも、テイクアウトのお弁当や地域住民から寄せられた食料を各家庭に配り、形を変えながらこの活動が続いてきたことを知りました。話を聞けば聞くほど、「この料理教室は、私が知っている子ども食堂として機能しているのでは」と思うようになり、改めて子ども食堂について調べてみることにしました。
子ども食堂の定義は、「子どもが一人でも行ける無料または低額の食堂」。実施場所は個人宅のほか、公民館などの公共施設、お寺や教会、福祉施設、飲食店など実に多様で、食事の内容、開催の曜日・頻度は団体ごとに決められています。目的も多岐にわたり、子どもたちへの食事提供、孤食の解消、共働き家庭の子どもに向けた放課後の学習支援などさまざま。いわきでは、現在10の団体が取り組みを行なっています。
可視化されにくい「貧困」「孤立」という社会課題に、「食」というみんなに開かれたツールで関われることなどから急激な広がりをみせる子ども食堂ですが、現場では課題も出てきています。中でも多いのは、来て欲しい家庭の子どもや親に来てもらうのが難しいという課題です。家庭状況の把握や活動の周知を、運営団体だけで行うのには限界があります。
子ども・食を通じてつながる「地域」
この課題を解決するヒントになるのが、子どものための料理教室での実践です。勿来地区ボランティア連絡会代表の木島勇道さんは、「地域の状況を把握している人が、子ども食堂の運営に関われているかが大切だ」といいます。料理教室では、コーディネーターの役割を担う地域住民や主任児童委員、社会福祉協議会が連携し、情報共有を行っています。地域のネットワークが、届けたい層に情報を届けることにつながっているのです。
多様な人の関わりは、取り組みだけでなく運営に関わるボランティアにも良い影響をもたらすという木島さん。料理教室の参加を通じて出会いや役割が生まれ、生きがいにつながっているメンバーもいるそうです。こどもと食、子どもと地域、地域と大人。子どものための料理教室が、実はさまざまななもの同士をつなぎ直しているのかもしれないと感じました。
いわきでは、高齢者のつどいの場やまちを盛り上げる活動など、すでに多様な取り組みが実践されています。取り組みのテーマを「食」と「こども」に広げることで、ごちゃまぜの居場所をつくるきっかけが生まれるのではないでしょうか?
公開日:2022年10月26日
子ども食堂訪問日記
先日、勿来公民館で開催された「子どものための料理教室」にお邪魔してきました。この料理教室では、地域で継続的に見守っていきたい子どもたちと勿来地区ボランティア連絡会のみなさんが、毎月第3金曜日に食事作りを行います。調理の実践と自立のサポートを理念に掲げ、3年前から活動がスタートしました。
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