web版 そうだ!国際福祉機器展に行こう! ~いわき発・おでかけを諦めない取組み~


 
市内で作業療法士として活動する廣渡一隆さん。
身体に不自由があっても「おでかけ」を諦めたくない。リハビリ利用者の方の想いから「おでかけ」企画を立ち上げました。今回は発起人・廣渡さんに、企画にかける想いを聞きました。
紙のいごく14号掲載の記事をちょっとだけ拡大してお届けします!!

ある話題で意気投合
私の自費リハビリを利用されている鈴木圭子さんとは、リハビリの間、様々な話をしている。体や動き方のことはもちろん、リハビリの方向性や時には社会情勢についても。「麻痺などの不便さが解決できるような用具があるといいな」という話から、国際福祉機器展という色々な福祉用具を見たり体験したりできる大きな展示会があることを話したところ、「是非、行ってみたい」「障がいがあってなかなか出かけられないような方も一緒に行けるといいんじゃないか」という思いが聞かれた。それは、展示会そのものが出かけるキッカケになって、福祉用具を利用する方とサポートする側が一緒に過ごすことで思いが知れて、どんなサポートが必要か、どんなサポートができるか、色々な気づきがあることが互いにとって貴重な機会になるのではないか。以前に「市内で、障がいのある方が出かけている姿をあまり見ない」と言っていたことも手伝って、すぐに「行ってみましょうか」ということになった。また、せっかくだからリハビリを学ぶ学生さんにも声をかけてみようという話になった。

 
 
25年前の経験が力に
人から見ると簡単に行動したように見えるかもしれない。ただ、私が即決できたのは25年程前のある経験があったからだ。その頃私は、東京都内の保健所の出先機関で働いていた。介護保険もまだない時代で、今でいうデイケアを行政が担っていた。そこに、精力的でおもしろい保健師さんがいて、利用者さんとの一泊旅行を企画していた。その時の利用者さんと参加を希望する家族、そしてそれをサポートする職員、私の知り合いの療法士、更には福祉用具取扱業者の方など総勢40~50人ほどで、観光バスを利用しての旅行だった。車椅子利用の方は2人で介助して、休憩ごとの乗り降りをした。宴会では飲酒する方もおり、日頃ベッドを利用している方の中には大部屋の布団で寝る方もいた。帰る頃には身体の動きが良くなる方も多く、楽しい時間を過ごした。こんな経験から、この日帰りの企画は可能だと、すぐに思ってしまったのだ。(まあ、そんなに簡単ではなかったが。)
 
 
実現に向けて動く!

2023年9月の国際福祉機器展に向けて2022年12月から広報を開始。自身のFacebook やブログでも、企画を宣伝した。初回の説明会は、2023年2月にzoomにて開催した。どのくらい集まるのか非常に不安だったが、発起人の2人以外に、ケアマネジャー、介護福祉士、民生委員、作業療法士などの方々が参加してくれた。この説明会は、9月まで毎月1回開催し、企画の狙いや実際の移動手段、費用のことなど、意見を交わしながら「想い」を「現実」へと形づくっていった。しかしながら参加希望者は思いのほか増えず、この企画を「もっと多くの方に知ってもらいたい」「安心して話を聞いてもらいたい」という思いから、市や、県作業療法士会いわき支部へ働きかけ、後援をいただいた。4月には参加者募集のポスターを作成し、市内各所へ配り歩いた。同時進行でホームページを作成。これらは実行委員として動き出した有志のメンバーが時間を縫って作成してくれた。7月には参加希望者が決まり、参加者に合わせて交通手段を具体的に決める段階に。実行委員の中から「公共の手段で行かないと万一の時の責任を負いきれない」という意見が出たことで、介護タクシーと鉄道のチームに分かれる方針とした。費用捻出に苦慮したが、協賛金を募ると、企画の趣旨に賛同してくれた介護事業所や複数の企業から協力をいただけた。結果として、介護タクシー利用の方も鉄道を利用した方と同程度の負担で出かけられるようになった。

電車でもGO
多くの願いを叶える
企画参加者の中にはいわき市外の方も2名いた。現地では会場の広さに一同驚愕しつつも、時間の許す限り見て回り、無事帰路についた。(※当日の様子や参加者の感想は、WEBのいごくをご覧いただきたい)今回の活動を通して、同じ思いを持つ人が集まれば、誰かの「でかけたい」という思いを実現する機会が増えるのではないか、というひとつの結論に至った。そういった人が集まる場・きっかけを作りたい。身体に不自由があるからといって、出かける手段に困ったり、家族に言いにくかったり、出かけたい気持ちがすぐにしぼまないようにしたい。一方で、やっていて楽しくないものは続かないとも思う。楽しんでやっていける場、機会、雰囲気を作り、関わる全ての人が「携わって良かった」と思えるような集まりに繋げていきたい。そして、行き先は国際福祉機器展だけに限ることなく、1人でも多くの「おでかけ」への希望を叶えたい。
 
廣渡一隆
福岡県出身。作業療法士として病院や老健施設、保健所などに勤務。現在は市内でリハビリセンターReborn を設立し、自費リハビリに携わる。
 
 
 
 
 
あとがきにかえて、参加者の感想をご紹介します。
☆17歳(男)高校生
母からの紹介で知ってこの企画に参加しました。今まで福祉機器についてあまり知らなかったのと、色々な方と会って見たかったので良い機会だなと思い参加してみようと思いました。
会場には見たことがない福祉機器や災害対策のシステムがあり、とても学びになりました。車椅子などのよく知る機器もありましたが、機能などが私が知るよりも格段に進化していて興味深かったです。会場全体を見ることができなかったのが残念ですが、とてもいい経験になりました。福祉バスの中でも色々な方とお話できて、様々な考え方や生き方などが知れてとても勉強になりました。
また次回があれば、是非参加させて頂きたいです。

☆20歳(女)大学生
とても楽しく充実した一日を過ごすことができました。
このように様々な福祉機器を目で見て、触れることのできる機会は自力だとなかなか難しく、参加して本当に良かったと感じました。学びや交流など良い経験になったと思います。

 
☆34歳(男)男性地方公務員
私、実は元療法士の卵でして(言語聴覚士を目指していました)、学生のときに国際福祉機器展行きの勧誘がありました。いつか行きたいと思っていたのですが、やっとその夢が叶いました。
私は18歳のときから右半身麻痺の障害を抱えているので、自分の障害はもうほとんど回復はないと思っています。しかし、医療機器は日々発展しているので、身体の動きを回復させることや、失った動きをカバーする新たな医療機器が発明されているかもしれません。実際に見学してみて、障害の好転の希望が持てる内容でした。またこの会自体、異業種に渡る人々で集まり、Zoomで定期的に話し合い、他県の私まで参加させて頂いて、この会の初の開催ながら、非常にオープンにできていたのではと思います。
私もいずれ山口県から障害者や関係者を連れて来たいと思っているのでとても参考になりました!

☆29歳(男)福祉関係
無限大の可能性に満ち溢れた企画に携わることができ、とっても素敵な1日でした。
いい意味で、障がいのある方、学生の方、一般の方、専門職などの方々の境界線がそこにはなく、私の方が、皆様方から沢山の感情や考え方を与えてもらいました!!

☆52歳(女)作業療法士
今回の企画に期待していたことは、福祉機器を自分の目で見てみたい。体験してみたい。サポートできる部分があれば、少しでもお役に立ちたい。
でも、実際行ってみて感じたことは、ただただ幸福感と充実感。福祉機器が見られたのはごくごく一部でしたが、不完全燃焼感はこれっぽっちもなく、ほんとに行って良かった、という思いだけ。年齢、性別、環境、目的みんな違っている面白さがあって、多様な意見を耳にでき、そこにあるのは互いを理解しようと言う柔軟な思考だけ。私自身学びが山ほどありました。とても素敵な空間にいられたことへの幸福感と充実感、それに尽きました!

 
皆さんの素敵な笑顔に、希望を感じますね。
おでかけへの挑戦はこれからも続いていきます。
 
 

公開日:2024年09月30日