北二区ババアのコミュニティデザイン

謎企画「北二区カカシフェス2019」体験記


 

農村に行くと田んぼにカカシが置いてあって、ほのぼのしちゃうことって良くある。けれど、これほどのカカシが、コメ作ってるわけでもない地域の、ただの野っ原に「置かれている」のは、はっきり言って謎だ。害虫駆除でもない。芸術作品でもない。旧産炭地、いわき市好間の母ちゃんたちが置いたカカシに、いま、人が吸い寄せられている。

北二区カカシフェス2019。誰が呼んだか知らないが、このイベントはそう呼ばれている。いや、ごめんなさい。ぼくらが勝手にそう呼んでました。昨年も、いごく編集部で取材に行ってました。すみません。ほんと素晴らしいイベントで、だから今年も行ってきました。だからレポートします!

※本稿はいわき弁で書かれております。大変読みにくい表記となっておりますことをご了承下さい。

 

じゃんがら念仏踊り青年会カカシ。耳を澄ますと鉦の音が聞こえる(いわき市民あるある)

 

なんでまだここにカカシが置かれでんのかっつーと、一言でいうと、この地区の過疎化が進んで人がいなぐなって、それで「村おごしすっぺ」ってことで、地域の母ちゃんたちが作ったからなんだ。この北好間地区は、むがしは好間炭鉱があったどごだ。列車も走ってっぺし劇場もあっぺし、カカシが展示されてるこの野っ原も、炭鉱時代のグラウンドだったんだど。

でも、エネルギー事情が変わって炭鉱が閉山になったら人は減り続けっぺした。それで、北二区のババアたちが「カガシをたくさん並べでみっぺ」っつうこどになって、それでいつの間にか展示が始まったんだど。

いや、あのね、「ババア」っっつうのは、ここの母ちゃんらが自分らで言ってんだがんね。オレらが「ババア」って言ってるわげじゃなくって、母ちゃんたちが自分らで「アダシらババアでいいんだがんね、だってババアなんだがら」って言ってんだもの。しょうねえべ。

で、いやあ、これはおもせーわってことで、去年、いごく編集部のデザイナーやってる市之助っつうのがいんだけども、そいつがレポートして、それで「北二区のカカシ最高だ」って書いたんだわ(記事のリンクはこれな)。で、それが災いして、市之助は今年からカカシフェスの実行委員会(母ちゃん会)に入って、おめぇ、カガシ、100体も作らされた・・・・いや、カカシ作りに全面協力させてもらったらしいです。

 

カカシ制作に尽力した、いごく編集部のデザイナー高木市之助は、冒頭で挨拶させられていた

 

面白がって関わってだら、「お兄さん、お手伝いしてよ」ってババアに巻き込まっち、そんでカカシ作ったわけだ。最高だな、こういう関わり方、いづの間にか巻き込まれでんの。それがババアたちの魅力だと思うし、この地区の魅力だし、これこそ地域づくりだな。市之助さん、お疲れ様です!

で、そういうパワーを持ってっからこそ、母ちゃんたちは、月に一度、集会所で自分らでご飯を作って、地域のもっと高齢な人たちに料理を振舞って、見回りしたり、声かけしたりしてる。「過疎化が進んだ地区」がも知んねえ。でも、そういう地区だからこそ、謎にパワフルな地域自治や、助け合い、オダガイサマができてんだと思う。

それをね、オレらは「勉強さしてください」ってことで、関わらせてもらってると、そういうわけです。

 

かわい子ちゃんカカシ。うるうるしてる

 

又兵衛母ちゃんカカシ。表情がいいし、なんだな縁起もいいなあ

 

いごく編集部カカシ。かと思ったら、蒼井優ちゃんと山ちゃん結婚おめでとうカカシとのこと。やさしい

 

ってなことで、今年のカカシはハイクオリティだ。表情も豊かだし、衣装も最高。じゃんがら隊もあれば、野球チームもあるし、炭鉱のおっちゃんもいっぺし、いごく編集部もあっかんね。旬のデザイナーと、北二区の元気な母ちゃんたちがつぐったんだもの。そりゃあ最高に間違いねえ。愛嬌あんだよ。

 

突如始まったヤッチキ

そして、おめえ、今年はカカシだけじゃねえぞ。ヤッチキだ! おめえ、三和がらヤッチキの母ちゃん連れできて、そんでオレらもいつの間にか輪踊りに入って、カガシの前で踊ってんだど。なんの儀式だよ。最高だよ。

 

突如始まったヤッチキの輪踊り

 

ちっと説明が必要だな。ヤッチキっつうのは、いわきの民俗芸能で、いまではいわき市の山間部の三和(みわ)っつうどこの父ちゃん母ちゃんが守ってる踊りなんだ。歌詞がとにかく卑猥で、踊り方も面白い。ヤッチキについて詳しくは、いごく編集部で、地元の歴史だの文化だの気が狂うほど探求してる江尻浩二郎っつうのが書いでっから、それ読んでみろ(これがリンクだ)。

江尻も、謎のババアに巻き込まれっちまったんだなあ。

 

三和の保存会の母ちゃんのヤッチキは、やっぱキレが違う

 

川平地区を代表する宴会踊りの名人も参加した(紫)

 

郷土史探求家としてヤッチキを研究している江尻(帽子)も腰の入った踊りを披露

 

さあ、みんなでお食事会!

 

意味不明なほどにうまい煮卵。黄身は半熟。何個でもいける

 

考えられないくらいうまかったニラのコロッケ? ニラたっぷり

 

で、みんなでヤッチキ踊って、それで、母ちゃんの作った手料理を食べで、おしゃべりして、また会いましょうね、楽しかったからまたやりましょうねってみんなで笑顔で約束して、フェスは終わり。

すばらしいべ? そうしてヨ、いろんな人がテントの下にあづまって、笑顔でご飯食べて、そのご飯も、高級食材なんてないんだがら、ぜーんぶババアの手料理。それ食いながら、来年また会いましょうって約束できる。幸せだど思わねがい?

 

ババアたちの巻き込み力

しかもな、今回は、本当にいろんな人があづまった。

いわき市内で、“いごく的”に面白い地区として、この北二区と双璧を成す「川平(かわだいら)」って地区があんだけど、そこの区長さんはじめ、父ちゃん母ちゃんも来てくれだ。でね、その川平っつうとごろも旧炭鉱町で、とにかく歴史もババアもおもしれえってんで、これ書いてるオレも、去年から「しらみずアーツキャンプ」っつうイベントの企画チームに入った。オレもいづーの間にか、巻き込まれだんだな。

それに、いわきの平で、障害のある人も高齢の人も一緒にっつってNPO法人を立ち上げで施設運営してる中崎さんっつう母ちゃんも来てくれだ。中崎さんなんておめえ、「いつだってだれだって、あったかいご飯でもてなしたい」っつって、平に「いつだれkitchen」ってコミュニティ食堂立ち上げた人だ。いつだれkitchenなんて、いごく編集部全員巻き込まれでんだがんね。

みんなそう。面白いババアに巻き込まれでんの。

 

川平の馬目区長もご挨拶。ヤマを超えて旧産炭地がつながっている

 

いごく編集部高木に指示を出す、北二区ババア代表兼フェス総監督のKさん

 

みんなであづまってご飯を食べる。それだけで奇跡的!

 

愛車の軽トラを駆るKさん

 

と、軽トラで運ばれてくる料理。どこにも負けない最高の味

 

北二区ババアたちの、その底抜けの元気が、いわきのいろんなところに波及して、最初は市役所で福祉に関わる人たちが、そして次にオレらみでえなのが、いつの間にか巻き込まれて、その地区がどんどん面白くなっちゃって、ほんと参っちゃう。いやあ、こういうのが「コミュニティデザイン」っつうのかも知んねえな。

有名なクリエイターじゃねえよ? ババアがやってんの。カカシとお料理なの。オレらなんてほんと、カッコだけでヨ、カスみでえなもんだなって、みんなの笑顔見てだら思っちゃったなあ。ババアの取り組みから、いろんなものが生まれてきて、キーパーソンがつながって(話聞くと、だいたいすでにつながってんのな)、次の企画がすぐ決まっちゃう。いごき方に躊躇ってものがねえ。

それからねえ、ババアは遠慮がねえんだ。いろんなところに、力貸してくれって言ってるでしょ。手伝ってくれって。そんで料理作んのはうめえし、オレら、いづの間にか「うんめぇ」っつって、巻き込まれでで、大変なんだけど、なんだが心のおぐのほうが、あったがくなんだよなあ。地域で生ぎるっちゃあ、そういうもんなのがもしんねえ。オレらきっと、そういうことを学び直してんだな。

宝物は、あだらしく見つけるもんじゃねえ。特別なものも必要ねえ。もう、オレらの地域のなかにあんじゃねえか。その磨き方次第だなって、オレはねえ、ババアとカカシに、そんなことを教えられた気がすんだ。過疎化が進んだ地区に飾られたカカシだけどヨ、どこの地域づくりプロジェクトにも負けでねえ。人もカカシも、とにかぐ、みんないい顔してんだもの。かなわねど。

母ちゃんたち、ごちそうさまね。またニラ食べにいぐがんね! かえってお世話さまでした!

 

いわきを代表するババアの皆さんと、いごく編集部で記念撮影

 


公開日:2019年09月27日